保育士不足と待機児童の現状
待機児童の問題が叫ばれて久しいですが、その背景には深刻な保育士不足が隠れているのをご存知でしょうか。
厚生労働省の調査によると、平成29年10月の保育士の有効求人倍率は2.76倍と高い水準にあります。
子供の受け皿を増やすために保育施設を拡充しても、そこで働くスタッフを確保できなければ、待機児童の解消にはつながりません。
そこで、保育士の資格があるのに働いていない潜伏保育士の存在が注目されています。
潜在保育士
潜伏保育士とは、保育資格があるのに保育施設で働いていない人のことです。平成27年の厚生労働省の資料によると、その数は70万人以上と言われています。その中には、資格を取ってから一度も保育士として働いたことのない人と、数年の勤務経験がありつつも現在は働いていない人の両方が含まれます。
有効求人倍率は高いのに、なぜ保育士として働こうと思う人が少ないのでしょうか。大きな原因の一つが、報酬の低さと言われています。
看護師や幼稚園教員など他の職種と比べても、保育士の給与は低く抑えられています。
どんなに仕事が好きでやりがいを感じていても、給料や待遇面との折り合いがつかなければ、離職してしまう人が多いのは仕方のないことでしょう。
また、労働時間の長さや休暇の取りにくさも問題となっています。休日出勤や残業が多く、ワークライフバランスがとりにくい現場が多くあるということです。
保育園に勤めているのに、保育士自身は産休や育休がとれないといった矛盾した状況も起こり得ます。人間関係についての悩みも多く聞かれ、特に園長や所長などの施設トップとの軋轢が多いようです。さらに、評価制度のあいまいさ、子供を預かるプレッシャー、保護者との関係など保育士が抱えるストレスの原因は多岐にわたっています。
そのため、これらの条件が解消できるまでは保育士として働くことを断念する人達がいるのです。
待遇の改善
支援センターやハローワークなどを通じて、希望条件に応じた就職先のあっせんや相談を受け付ることで、支援センターやハローワークなどを通じて、希望条件に応じた就職先のあっせんや相談を受け付ることで、就職するための機会や窓口が広げられました。再就職にあたっては、実技研修を行うサポートもあります。
さらに、復職を果たした保育士が長く勤め続けられるための、処遇改善や人材育成への研修などの取り組みも進められています。研修には、保育スタッフだけではなく、施設長などの管理者向けも含まれているのも特徴です。
政府の「働き方改革実行計画政府」内でも、保育プランの拡充の一環として、保育士の人材確保について触れられています。その中では「待機児童解消加速化プラン」と連携して、報酬・処遇改善、就業継続支援、離職者の再就職支援などがうたわれています。
また同時に、課題として保育士の技能・経験に応じたキャリアアップの仕組み作りもあげられました。そのため、長く勤めることで経験や技能が上がれば、将来的にはそれに伴う保育士の給与アップも期待できるので、保育士が長く勤められる環境整備はますます大切になっていくと言えるでしょう。
政府による施策の効果が、理想と現実のギャップを埋めるまでには至っていないのが実情で、保育士不足と待機児童の完全な解消には時間がかかることが予想されます。それでも自治体や保育所によっては、その効果が現れ始めている所もあります。こうした効果が持続・拡大し、新人保育士や潜伏保育士が就職先の条件を見極めながら、積極的に職場を選ぶことのできる環境が整えば、待機児童の解消にもつながっていくことでしょう。